2011年06月26日

“真夏のストーブリーグ”取材の思い出

 オールスター前に、阪神球団が担当記者に対し、岡田監督、選手の自宅での取材自粛のお願いをしたという。優勝候補に挙げられながら、期待を裏切った成績に甘んじているだけに、記者仲間では辛辣な意見がある。

 「真夏のストーブリーグ封じ込めのつもりかもしれないが、ヤブヘビになりかねないな。『そうか、球団が自宅取材自粛をお願いするということは、それだけ各社が動き回っているということか。ウチもやらなきゃいかん』という社も出てくるだろうな」。

 へそ曲がりは新聞記者の特性だから、こういう裏読みをするのだが、確かに当たっている面もあるだろう。「ストーブリーグは真夏に始まる」というのは、球界の定説だ。オールスター後には、来季に向けた首脳陣人事、トレード、FA選手獲りなどのストーブリーグが、水面下で動き始めるからだ。企業の人事異動と同じで、事前の漏洩は御法度。決定前に明るみになれば、ストーブリーグはご破算になる。だから、球団首脳への取材も本音を探るための禅問答のようになる。

 後半戦開始前に、巨人・渡辺恒雄球団会長が、原辰徳監督と会食しながら前半戦の報告を聞き、「さすがオレが見込んだ監督だ」と絶賛したという。これなど、まさにストーブリーグ用対策の発言の典型だろう。一流の経営者というのは、さすがに二枚舌、三枚舌を持っているという証明になる。

 実際は、北京五輪日本代表・星野仙一監督(阪神シニアディレクター)の擁立、ソフトバンク・王貞治監督の招へいに失敗した結果、仕方なく第三の男・原監督を復帰させたのに、平然と「さすがオレが見込んだ監督だけのことはある」と言い切るのだから。

 オールスター前から失速したチーム状況を考え、原体制にお墨付きを与えることで、真夏のストーブリーグを封印しようという、渡辺会長の政治的な発言だ。もう一つ、特別な理由が考えられるだろう。「来季、原監督続投」発言をした際に、ソフトバンク・王監督の招へい失敗を自ら一部担当記者に漏らしてしまったからだ。当然、原監督にしたら平静ではいられないだろう。そこで、アフターケアとしてリップサービスした意味合いもあるのだろう。

 ストーブ取材で、今でも思い出すとニヤリとしてしまうのは、正力亨オーナー(現名誉オーナー)の発言だ。連日のように自宅へ押しかけ取材したが、嫌な顔一つせずに応じてくれる。ある時、「君、きょうは築地か?」と言われ、「エッ、築地ですか?」と絶句してしまった。「わからない男だな。築地は河岸がある所だろう。生臭い話の取材かと聞いているんだよ」との答えには、「なるほど、恐れ入りました」と脱帽した。

 長嶋茂雄監督(現終身名誉監督)にコーチ人事の裏取り取材をした時のことも忘れられない。ウソをつけない人だから、間違っていれば、「恥をかくから書かない方がいいよ」と否定してくれる。口ごもったら、正解だ。ところが、その時はいきなり「いったい、誰から聞いたんだ」とあまりにもストレートな反応。笑いをかみ殺すのに大変だった。ストーブリーグ取材は、ひたすら待ちの忍耐のいる仕事だが、首脳陣の素顔にも触れられる最高に楽しいひとときでもある。
posted by エジリン at 10:42| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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